タラパットは南方仏教でも,特にタイだけで儀礼に使われる長い柄のついた団扇である。古くはウチワヤシの葉で作られ,現在は綿布や絹布で作られている。読経のときにこの団扇を片(通常は右)手で柄を支え,顔が隠れるように持つ。お経の頭出しをするお坊さんだけが使うときと,読経するお坊さん全員が持つ場合がある。この団扇の意味については諸説ある。
団扇はメッセージを持っている。あるお寺の葬儀用の団扇のオモテには四本並ぶと「死んだものは帰ってこないよ」という意味のタイ語の文章が刺繍されている。ある団扇は日付や場所,儀礼の名が記念として刺繍されている。王室,企業,貴族,商店,学校もしくはお寺の紋章や社章,校章などの刺繍が施されていれば,その儀礼の施主である信者たちは団扇を持って読経するお坊さんを見てご満悦なのだ。
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